Mac Pro とは何なのか 第三回 「メジャーアップデートというワナ」

2009年3月、FSBからQPI(Intel QuickPath Interconnect)への大幅なロジックボードの見直しが行われ、遅ればせながらおとなのアーキテクチャを手にし(註1)、Mac Pro2009(MacPro4,1)は順調な滑り出しを行う。

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この年、7月に「FinalCut 7」が登場、8月には2007年10月以降の二年越しの「メジャーアップデート」となる、MacOS X v10.6「Snow Leopord」が発表された。
そのOSとしての大きな売りは「64ビットアプリ対応」と「OpenCL技術の導入」だと云える。
しかしながら、いずれも発売段階ではアップルがユーザー向けに大きくアピール出来たわけではない。「64ビット」化は明らかに「Windows 7」の成功を受けてのもので、OSに付随するDVDプレーヤーなど、デフォルトで付随するアプリケーションの半数が32ビットのままだったからだ。故にデフォルトでのインストールは「32ビット」で控えめに行われた。
Mac Proだけでなく、ユーザーサイドにとって「えらいこっちゃ」となったのは、「PPCコード」で書かれたソフトの実行環境がエミュレート化されたことだった。「Rosetta環境」が用意され「Universal Binary」とアプリ一つにコードが二つという変則的な開発モードとなってしまったにも関わらず「Snow Leopord」は、その使い勝手の良さで順調に行き渡った。
一方「PPCソフト」の実行速度は最大50~80%までで「PowerPCソフト」の愛用者は「ソフトをアップデートし、ハードウェアを買い換える」判断に迫られた。Mac Pro2009は10.5の走る最後のMac Proとなり、結果的に良く売れたマシンとなった、しかしここが「シルバーMac Pro」のピークとなった。
結論として「Snow Leopord」はアップルサイドから見れば大成功を収め、ボンダイブルー筐体のマックを粗大ゴミ送りにし、買い換え需要を獲得した。
連載の途中で結論じみたことを書いてしまうが「アップル・コンピューター」は「ハードウェア」を売って利益を出す会社であって、「OSやアプリはその販促物」であることを十分に認識する必要がある。
「アップル・コンピューター」の企業戦略は、メディアに「販促物」の話題を提供し続け、結果として十分に実用に耐えうるマシンを「ビンテージ・コンピューター」の烙印を押し、「サポート」を終了し、買い換えの需要を喚起させるという一貫した方法をとってきた。それが余りに巧みであるため、うっかりすると見過ごしてしまう。
私が「アップルに裏切られるのは慣れていますから」という繰り返し聞くことになったフレーズの裏で、アップル側は「ユーザー離れを起こさずに、どうすれば旧モデルを手放してくれるか?」という議論に熱中したに違いない。
その願いが叶うように「iPhone」が大成功を収め、膨大な利益を別の分野で獲得することになる。
そこで名称を「アップル」に変えた頃から、引きずられるように「コンピューター」も売れ出し、OSやアプリに大きな話題を提供する必要がなくなった。
ただし「コンピューター」部門のネックとなってしまったのが、ここまでアップルを引き上げた「Mac Pro」であった。
(註1)アップルのコンピューターの設計がまともになったのは「MacBook」「MacBookPro」のユニボディ化が始まった時期と重なる。この時期にハードウェア設計を外部に委託し始めたため、安定した構造をまとったお洒落なコンピューターという路線を獲得できた。この話はノートやiPhoneの微妙なカーブを、アルミの削り出しで量産しているある会社の社員から聞いた。
(註2)Mac Pro2009に準備されたビデオカードは補助電源なく動く非力な「NVIDIA GeForce GT 120」と 「 ATI Radeon HD 4870」だった。ATIが自社カードに、キャッチーな「Radeon」と命名して以来、Windowsのゲームユーザーにヒットし始めた。理由はGDDR5の高速な設定や、GPUコアのクロックの速さだった。
「 ATI Radeon HD 4870」はWindowsユーザーに人気のあった機種で、アップルは独自仕様で出荷した。「NVIDIA GeForce GT 120」も同様だが、自社の「LED Cinema Display 27インチ」との抱き合わせでの購入を睨んで、DisplayPort出力を取り付けた。歴代のアップルのディスプレイは評価が高かったため、miniDisplayPrortを購入したユーザーから大きな大きな不満の声が上がり、アップルは大量に在庫を抱えることとなった。

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