立体音響をどうするかに関しての個人的メモ

30年前の8ミリ映画のリマスターで、ドルビーステレオで作った音源をスタジオに持ち込んで、さばいてもらう前に僕は自信をなくしてしまっている。相手はプロだから文字通りの作業をしてくれるのだが、その頃のオーディオの環境とあまりにかけ離れているので、まずどう作って、どう再生し、どこが問題で、どうしたいかを書き出して見ることにした。

拝啓 RYUさま

先日は電話でパニクッて申し訳ない。
当時の音作りの環境が正にこういう状態だったから、引け目を感じてたのかも知れない。今回の問題は、(*1)2chステレオの修復をすると、マトリックス分解した時の演出が消えてしまうということ。じゃあ、元のステレオの音が悪いままがいいかというと、悪い音質でも当時の演出効果は残ってるんだよね。

タダで始めるサラウンド

BOSEの101を4本立てて、このスピーカーマトリックス配線が、僕の部屋、兼スタジオで、もし今回の2chステレオ音源を、当時のサラウンドに近い状態で再生をするとすれば、この配線の真ん中で聞いてもらうしかないんだよ。

お渡しした24/48のwavファイルは、当時のHi8のサウンドを出来るだけ丁寧に録音したものです。Hi8はアフレコ可能な8bitのPCMが2chあり、サイレントの映像に台詞をダビングし、それをモノラルのAFMトラックにダビング固定した。最終的に様々な生録や、位相反転や、多重録音を行いHi8のPCMに効果音を録音し、AFMの台詞を混ぜて、それをマスターにした(3->2)。現状のデジタルの2-6分解の最大の課題は、(*2)後方の情報が少なくヒスノイズが多く、音量を上げても本来入っている音がつぶれてしまっているようです。

ドルビーステレオが、システムとして完成するまでの決まりごとですが、

1、ソースは2chステレオ それを上映時4〜6chに分解。当時、高級映画館のスピーカーは3WAYだったので、.1がなくても低音20Hzは出すことが出来た、後方のチャンネルはモノラルだったので、 L C R リアで、4chで良かった。当時の70ミリ「2001年宇宙の旅」などは、リニア4chだったので、相性が良かったみたい。

2、ドルビーステレオの基本は、RとLの信号が同一の位相の時は、センター・スピーカーに出力を固定、逆相の場合は、後方のモノラルスピーカーに音を回した。(はじめの頃は、前後は分離していなかった)

3、後方の音質が良くないため、位相反転のリア出力に、ドルビーBノイズリダクションを掛けた(これがドルビーの強みだと思う)

4、前方のお客さんが、映画より先に後ろの音を聞かないように、リアに20m/sec.の遅延をかけた。

5、この後、プロロジック・エンコーダ&デコーダーが出て、正相は前、異相は後ろに切り離された、これでシステムとして完結したと思う。

DOLBY STEREO はホームシアターでは、DOLBY SURROUNDと呼び名は変わるが、そのPRO・LOGICを搭載したデコーダーを出してきた。

SONY TA-VE150

「スターウォーズ」、「バック・トゥー・ザ・フューチャー」、「ライト・スタッフ」など、どれも印象的なサウンドシーンがあるけれど、だいたい前から後ろへのエフェクトが多いよね、それから主に爆発や派手な演出が多かった。
そんな折り、元PFFの西村さんが「べーカムでとってテレシネしてもいいから、あんな映画とれたらええなあ」って、初めて映像よりサウンド優先で映画を撮りたいという話を聞いた。

それは「ベルリン・天使の詩」という映画で、ドルビー・ステレオ(2 – 6分解)、アナログの立体音響ではベストだと思っている。(*3)今回、音を足さないならこの映画のレベルを目指したい。

僕の持ってるサラウンド関係のPlug-inは
DTS Neural™ Surround Collection360° Surround Tools。
あとRYUさんの嫌いなProTool用だけど、
SurCode for Dolby E Bundle
上記の中で、単なる2-6分解では、特徴だった差はないように思う。
個人的にはデコードとミキシングに関して、2chマトリックス本来のアプローチをしている、NUGEN Halo Upmixが、いいんじゃないかと思っている。


また、2chステレオの状態で、WavesArtsのPanorama5や、ZOOMのH3-VRやH2nレコーダーの空間系のプラグインも面白いと思う。
僕が少し心配なのは、恐らく芝居や音楽の環境音を頻繁にいじると、わざとらしく作品を駄目にする。一方、映画のエフェクトのかけ方は、シーンごと、更にシーンの見せ場ごとに掛けかえることも、良くあるということです(*4)。

この映画のサウンドトラックの製作には、少なくとも10秒に1日というのはザラでした。頭でっかちの、20歳そこそこのアマチュアはサラウンドに魅せられ、ワンシーンの中に6パターンのリアルタイムミキシングとエフェクターの連続変化などもやっている。
ただ聞いていれば、普通のサウンドトラックかも知れないけれども、このサウンドトラックはサイレント、無の状態から50分の音を作り出したことをRYUさんなら、どういう修羅場だったか想像がつくと思います。
そういう全ての執着を作品から排除し、RYUさんのキャリアを信じて、捨てるべきところはどんどん捨てて、いい作品を作りましょう!(*5)

敬具

(*1)最初に2chステレオの修復をすると、サラウンド演出が消える。
(*2)後方の情報が少なく、音が悪い
(*3)原則として、音を足さないことにするか?
(*4)映画のエフェクトは、カット以上に変化が多い場合もある
(*5)作品をよくすること、それが最優先

 

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