新たなMac Proの定番カードを目指して(3)「Quadro4000 越え」

「Netkas」という、我々の中で最も信頼が厚く尊敬されている人物がいる。自作Mac用のビデオカード開発の頂点にして、広報活動も熱心なプログラマーである彼の活動がユニークな点は、自作ROMを披瀝するのではなく、惜しげもなくMacOS上での開発ツールを提供していることだ。彼が<NVIDIAのEFI作成法>を公開してから、事実上どのGeForceカードでもMacの起動リンゴ画面が誰でも作れるようになった。
かといってMac ProでPC用のカードが全て動くわけではない。アップルが提供するOS内のドライバに沿って作成しなければ動作しない。「Kepler」が以外に早く最適化されたのは「MacBookPro Retina」が「NVIDIA GeForce GT 650M」を内蔵していたからだ。「AMD 6000系 」は「iMac」「MacBookPro」から、「GT100」系は「MacMini」などから。ソフトウェアのアップデートごとに分散したドライバが統合され、そのおこぼれを頂戴する形でデスクトップのMac Proにフルスペックのビデオカードが使用できるというわけだ。
さて、私の話に戻るが友人に「自分でビデオカード作ったら?」と軽く言われてしまい、困ってしまったことがある。とてもじゃないが、NVIDIAやAMDのような巨大企業の製品を作れるはずがない。
ある日偶然、ウェブショップでPNYが「Quadoro 4000 for Mac」を2枚組で出荷しているのを見つけて、これ「おもろいなぁ」と思ったのだ。

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PNY VCGPU4KMAC-PCK NVIDIA Quadro 4000 Workstation Graphics Card
これは日本には出荷されていない。
PC自作派には「SLIの設計がなされていないMac Proにワークステーションクラスのカードを2枚挿すことに意義があるのか?」と突っ込まれそうだが、大いに意義がある。NVIDIAのどのカードの広告を見ても「ゲームに最適なカード」以外の文言は殆どない。「GTX285 for Mac」にしても「BootCampでゲームを楽しもう」という始末だ。
ズバリ分けてしまえば、Windowsデスクトップマシンの主要目的は「ビジネス」と「ゲーム」に尽きる。前者はDELLやHPなどを好み、PC自作派はほとんど後者だ。更に勝手に言わせて頂くと、人より速いベンチマークを競うこと自体が目的のPC自作派も多い。
一方、Macユーザーは私から言わせると真面目一徹という感じだ。ビデオ制作にグラフィック処理、音楽制作にDTP・Web制作といったアート系の「物づくり」に熱心に取り組んでいる人が圧倒的に多い。
ビデオカードの販売を始めてから私のMacProのパネルは、検証のための差し替えのため殆どフタは空いたままだ。それでも自分のSSDで、ちょっとした作業をする際に一番利用しているのが「Quadro 4000」だ。理由は単純で、差し替えやすく性能もほどほどにいいからだ。ただし「CUDA」のレベルが低いので、レンダリング作業をする際には恐らく別のカードを使うと思う。
しかし2枚入るとなると話が違ってくる。単純に片方で長いエンコードをGPUにさせながら片方でWebブラウズするとか、映像の編集だったら片方でH.264系の映像ををGPUでレンダリングさせながら、もう一方で音素材をまとめるとか、めちゃめちゃ自由に使えると思ったのだ。これはTDP145Wという省電力だから成せるわざともいえる。
そこで思い出したのが友人の「自分でビデオカード作ったら?」である。要は「GeForce」で「Quadro 4000」以上スペックを持つ、理想的なカードを作ることを思い立ったのだ。
私が映画を作る中で一番拘っていたのが「5.1サラウンド」だったせいで、PPC系のプラグインが結構沢山あり「SnowLeoperd」が使える「GeForce400シリーズ」を調べてみると、偶然にも「GTX460」のTDPが160Wと超省電力で、10W絞ればMac ProのPCI Max 300W以内に2台収められると思ったのだ。「CUDA」の搭載量も多く、ほぼ全ての領域で「Quadro 4000」を超えられる可能性のあるカードとしてはベストチョイスだった。
ともかく苦労したのは「NVIDIA BIOS Editor 」通称「NiBitor」での数字との葛藤である。ピーク電力を減らすため、ちょっとずつ(0.0125V単位)で絞ってMac Proという機械と、MacOSで使用する代表的なソフトウェアを頭に入れて「Quadro 4000」越えを毎日練り込んでたわけだ。カードにBIOSの書き込みをされた経験のある方なら、この数字と物理的処理の繰り返しが如何に大変かはご理解いただけるだろう。それはまだ苦痛ではなかったのだが、ベンチマークと負荷テストはキツかった。結果が出るのに時間が掛かりすぎてデータが出そろうまでのストレスは半端ではなかった。
最終的には元々の数値を生かし、結構シンプルにまとまったと思う。結果20W程度下げられたのだから、もうちょい個別のスペックを上げてもいいかと思ったのだが、目標としていた「Quadro4000越え」は達成したし、商品として出す目的もあったので無理はしないでおいた。

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VS.,

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今回「NVIDIA GTX 460 Mac Edition」と名付けたのは、単にBIOSにEFIをくっつけただけの製品ではなく、2008年の「EVGA GTX285 Mac Edition」以来の、性能と価格のバランスがとれた「定番」と呼べるカードになって欲しいという気持ちで、他のカードの名称とあえて区別することにした。
実は、この企画は『「Fibre Channel」「eSATA」「ビデオデバイス」など、負荷の多いPCI機器との同時接続』とそのままの悩みを抱えていらっしゃる、お客さんの悩みからヒントをもらった。
まあ「国破れて 山河あり 城春にして 草木深し」とはよく云ったものだが、未だ戦乱の真っ最中というのが正直な心情だ。

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